運転資金とは?種類、特徴、計算方法、資金調達方法を解説
個人事業主や中小企業など、大企業ほどの体力を持たない企業は自己資本の割合は少ないものです。そのため、経営や事業を継続していくための運転資金は他から調達し続ける必要があります。
この際に必要となる資金は一般的に運転資金と言われますが、運転資金の中にもいくつか区別があります。ここではその種類や内容について詳しく解説しています。
目次
運転資金とは
事業活動に必要な資金のうち、事務所の契約料や設備面での初期投資(設備資金)を除いたものが運転資金となります。
事業性の資金という事もあり金融機関側も融資に積極的である運転資金は、主に下記の5種類に分けられています。
- 経常運転資金=仕入費用、従業員への給与など基本的な資金
- 増加運転資金=売上げの増加に伴って必要となる資金
- 減少運転資金=売上げの減少に伴って必要となる資金
- 季節運転資金=ある特定の季節に必要となる資金(賞与など)
- 設備(未払)運転資金=設備資金の内、半年以上未払いとなっている資金
「運転資金」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%8B%E8%BB%A2%E8%B3%87%E9%87%91
運転資金/つなぎ資金について
運転資金と混同されやすい言葉に「つなぎ資金」があります。
ここでは念のため、運転資金との違いを理解するため、つなぎ資金について解説します。
つなぎ資金は個人向けと法人向けの2種類があります。
個人が住宅を新たに建てる際、住宅ローンに申し込むのが一般的かと思われます。
しかし、住宅ローンの融資金が実際に手元に入るのは建築の完了後となるため、着工金などの支払いが困難となってしまうのは間違いありません。
このような場合につなぎ資金を利用して、住宅ローンが融資されるまでのズレを解消するという訳です。
法人向けのつなぎ資金の場合も、個人向けと同じく「入金と支払いのズレを解消するための資金」として扱われています。
事前に予測が立てられず突発的に発生する資金と言えますが、支払いの原子は「個人向け=後に手元に入る住宅ローンの融資金」「法人向け=後に手元に入る売掛金の回収金」とはっきりしているのが特徴的です。
運転資金とつなぎ資金の違い
運転資金とつなぎ資金について大まかに理解して頂いた所で、次は2つの違いについて見ていきましょう。
2つの資金の特徴についてご理解頂いたならばもうお分かりかと思いますが、運転資金とつなぎ資金は「正反対」という意味の資金ではなく同じような資金だと言えます。
「違いがあるかどうか」と言うよりは、考え方によって呼び方が分けられていると理解するのが良いでしょう。
また、つなぎ資金自体が運転資金の一部だと考える事も出来ます。
- 運転資金=経営・事業を行う上で必要となる資金
- つなぎ資金=入金と支払いのズレを解消するための資金
このように運転資金とつなぎ資金はどちらも同じような資金ですが、一部決定的な違いがあります。
運転資金には算出方法が存在しており、例えば経常運転資金であれば「経常運転資金=売上債権+棚卸資産-買入債務」という算出式で計算する事が出来るのです。
このため、事業を行っているのならどのような段階でも自社の運転資金がどのような状況なのか把握する事が出来ます。
一方、つなぎ資金は「突発的に発生した資金」という意味合いが強いため、事前に把握する事は難しいものなのです。
金融機関側としても出来る限り理由がはっきりしている資金の方が分かりやすいものですから、運転資金(経常運転資金)の方が融資は受けやすいと言えます。
運転資金の計算方法は?
運転資金(経常運転資金)については事前に把握する事が出来ると先ほどお伝えしました。
では、実際に算出する場合はどのように計算を行えば良いのでしょうか?
運転資金の算出方法については、先ほどご紹介した「経常運転資金=売上債権+棚卸資産-買入債務」という「在高方式」と呼ばれる計算式の他、売掛金・買掛金・在庫の回転率を用いた「回転期間方式」が存在します。
- 売上債権回転期間=(売掛金+受取手形)/{年間売上高/365日(12ヵ月)}
- 買入債権回転期間=(買掛金+支払手形+受取手形の譲渡高)/{年間売上原価/365日(12ヵ月)}
- 棚卸資産回転期間=棚卸資産回転期間=棚卸資産/{年間売上原価/365日(12ヵ月)}
「商品を販売してから売掛金を回収するまでの期間」を示すのが売上債権回転期間。
「商品を仕入れてからどれくらいの期間で買掛金の代金を支払うか」が買入債務回転期間。
また、「商品を仕入れてからどれくらいの期間で販売したか」を求めるのが棚卸資産回転期間です。
日数または月数どちらで求めるかは自社の状況によって判断します。
有高方式で算出するのが一般的とされていますが、より正確な日数や月数を求めたい場合は「回転期間方式」を使用するのが良いでしょう。
運転資金を把握するメリット
運転資金は経営・事業を安定して継続するために必要不可欠な資金です。
しかし、常に綿密な計算を行い将来的に必要となる資金の予測を立てているという経営者は、個人事業主も合わせて考えると以外と少ないのではないでしょうか。
運転資金を算出しておくと、具体的には以下のようなメリットがあるでしょう。
運転資金/安定して経営を行える
現在、そして将来的な事業に必要となる運転資金を把握しておく事で、安定して経営を行えるようになるのは間違いありません。
例えば、「売上が何%増加したら、○○円の運転資金が○○月から必要になる」というように資金の流れがより具体的となります。
仮にまだ融資を検討出来るような状況でなければ、仕入や営業を抑えるといった対策が打てるはずです。
運転資金/早めに融資を検討出来る
上記のような対策を打っていたとしても、売掛金の回収が遅れてしまい運転資金が不足してしまう状況が無いとは言い切れません。
このような状況になり、慌てて融資を検討し出すのはあまり得策ではありません。
運転資金の計算し将来的にいくら不足するのか明らかにしておけば、早めに融資の検討を行っておく事も可能でしょう。
運転資金/融資が受けやすくなる
早めに融資を検討出来るとともに、金融機関からの融資が受けやすくなる事も運転資金を算出しておく事のメリットです。
金融機関などから融資を受ける場合、必要となる金額などの詳細な説明が求められます。
「いつまでにいくら必要か」という基本的な条件の他、返済期間などもしっかりと決めておかなくてはなりません。
常日頃から運転資金の算出を行っておけば、融資の際にも本筋を通した明確な説明が出来る事でしょう。
デメリットとなるのはせいぜい計算に必要な時間だけですので、是非とも自社の運転資金の算出を行うようにしましょう。
運転資金の資金調達方法(融資等)
運転資金を調達する方法はいくつか考えられますが、主に下記のような方法が挙げられます。
- 銀行からの融資
- ノンバンク系からの融資
- 日本政策金融公庫
- ファクタリング
- 手形割引
- 不動産担保ローン
銀行やノンバンク系、日本政策金融公庫からの融資は比較的一般的です。
手形割引や不動産担保ローンもリスクはありますが、確実に運転資金を確保したい場合は利用を検討しましょう。
ファクタリングは近年急速に広まっているもので、未回収の売掛債権を現金化するシステムです。
取引間に事業者が入るため手数料がかかってしまいますが、主要な大手銀行以外にも多くの事業者が参入して来ています。
どの方法も一長一短ですので、自社の経営状況などに合わせて柔軟に選ぶのが良いでしょう。
【まとめ】運転資金は必要不可欠な資金である
運転資金はどちらも経営を行うにあたって必要不可欠な資金です。
万が一運転資金が不足してしまっても、焦らずに対処できるよう少しずつ準備を進めていきましょう。