【ベンチャーキャピタルの仕組みが分かる!】なぜ創業間もない企業に巨額の投資をするのか?

一昔前は資金調達の方法と言えば、銀行からの融資を指しましたが、最近の20代、30代の若手ベンチャー企業の経営者の間で「資金調達」と言えば、どちらかというとベンチャーキャピタルに株式を売却する事を指すケースが増えてきました。

銀行からの融資によって徐々に会社を大きくしてく経営スタイルから、ベンチャーキャピタルから創業間もないタイミングから資金調達する事によって、銀行融資での成長では追い付かないほどのスピードで成長するスタイルを志向する経営者が増加します。

 

しかし、経営者側には資本金を厚くする事によって急成長できるというメリットがありますが、ベンチャーキャピタルはなぜこのようなリスクの高い企業に出資を行うのでしょうか

本記事では、若手経営者に限らずシニア経営者も知っておいた方が良いベンチャーキャピタルの仕組みについて説明します。

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ベンチャー企業が作った企業の新たな成長パターン

現在の世界の企業の時価総額ランキングを見ると、1998年に設立されたgoogle(正式には親会社であるアルファベット)や2004年に設立されたFacebook、1994年に設立されたamazonなどがランキングの上位にはいっています。これらの企業は20世紀末のIT革命以降に誕生した企業でわずか10年や20年の間に世界のトップ企業に君臨するようになったです。

これらの企業が大きくなったのは、20世紀の後半になって発明されたシリコンバレー流の経営方法によって拡大していった企業達だからです。

すなわちベンチャーキャピタルが有望そうな市場でサービスを展開している企業がまだサービスが完成していないうちから巨額の投資を行い、その資金を元に、ベンチャー企業が赤字でも良いから売上や流通額をリーンスタートアップという手法でトライ&エラーを繰り返しながら急速に成長させていきました。

その成長に対してまた投資が行われて、その資金を使ってまた赤字を覚悟して成長して巨大企業になるという風な仕組みで成長したのがこれらの企業なのです。

これらの企業が成長した背景には、投資を行ったベンチャーキャピタルが背後にいるわけですが、彼らはこれらの会社の上場した株式を売却する事によって多額の利益を得ました。また、このようにベンチャー企業に支えられて会社を大きくして上場などによって多額の資産を持つようになった起業家の中には今度は自分でベンチャーキャピタルを作り後輩の会社に資金投入するという人も珍しくはありません。

典型的な例として挙げられるのがペイパルを創業したピーター・ティールを中心とした「ペイパルマフィア」と呼ばれる企業家集団で、彼らはその後もYouTube、LinkedIn、テスラなどの今を時めくベンチャー企業の様々な関わり方をしています。

このようにシリコンバレーにおける、ベンチャーが資金調達をして巨大企業になって、それによって得た利益はまた後輩のベンチャー企業の成長に使っていくというシリコンバレーの生態系においてベンチャーキャピタルは成長しそうな会社に資金を注入するという重要な役目を果たします。

銀行はその性質上、リスクマネーを極端に嫌う傾向があるのでリスクのあるベンチャー企業が成長するためにはベンチャーキャピタルの投資に頼るしかありません。このような理由から、まだ市場が存在するか分からないリスキーな事業を行うベンチャー企業において資金調達とはベンチャーキャピタルからの融資を指す事が一般的になったのです。

ベンチャーキャピタルはなぜリスクマネーを出すのか

このように、シリコンバレーのベンチャー企業とベンチャーキャピタルが紡ぎ出す新たな企業の生態系は全世界のお手本となり、日本をはじめ全世界でベンチャー企業とベンチャーキャピタルが設立されていて、現在は20世紀前後以来のベンチャーブームが到来しています。

ここで注目するべきは、ベンチャーキャピタルはなぜリスクマネーを出すのかということです。資本投入といってもベンチャー企業は一般的に銀行のように企業に負債の部分ではなく、資本の部分に資金を投入します。それと引き換えに会社の株式を得るわけですが、投資先がもしも倒産してしまえば、ベンチャーキャピタルは株主なので元金を回収する事はできませんし、会社が大きくならなければ株式は塩漬けとなってしまいます。

このようにベンチャーキャピタルは銀行と比較して非常にリスクの高い投資を行います。このような理由からベンチャー投資は、企業の目利きの腕前があるという前提で投資した10社のうち1社しか成功しないという風に言われています。しかし、この成功した1社が大きく成功するので、トータルで考えるとベンチャーキャピタルは利益を出す事ができるのです。

ベンチャーキャピタルの投資回収の手段は一般的に、投資先を上場させ株式を売却する、上場はさせないがそのベンチャー企業の事業が欲しい会社に株式を売却する、投資した会社に株式を買い取ってもらうなどの手法があります。

特に日本に関してはジャスダックなどの新興市場の上場基準が緩いため、世界の中でも簡単に株式を上場させやすい国なので、ベンチャーキャピタルにとっては投資環境が整っていると言えます。

ベンチャーキャピタルの仕組みについて

このようにベンチャーキャピタルはリスクマネーに積極的に投資する事によって、アグレッシブに利益を狙いに行きますがどのような仕組みで運営されているのでしょうか。ベンチャーキャピタルは資金の出どころによって2パターンに分類する事ができます。

パターン①自分の財産や銀行から借りた資金を元に自己資金で運営をしている

自己資金で投資を行っている場合については比較的イメージしやすいと考えられます。いわゆるエンジェル投資家のようなパターンで、自分が伸びると思ったり、社会的意義があると思っている会社に個人的な思い入れを含めて投資を行うのがこのパターンです。もちろんこのような投資であっても営利性は追求されますが、どちらかというと個人の好みに従ってベンチャー投資を行うタイプの投資家です。

パターン②投資家から出資を募ってファンドを組成して運営している

このベンチャーキャピタルは成果に対してシビアです。個人の資金で運営しているのではなく、出資を募っているので、確実に投資回収を行って、利益を投資家たちに還元しなければならないからです。

特にベンチャー企業に対する投資は1社でも成功企業がでれば大きなリターンを得られますが成功率が低いため、投資するべき企業を見極めた上で投資を行わなければ簡単に元金割れしてしまい、投資家に還元するどころか損をさせてしまいます。

ちなみに、投資をされる側の経営者にとっては、あまり重要ではありませんが、後者の投資家から出資を募ってファンドを組成するパターンですが、組織の根拠となる法律によって3つのパターンに分類されます。

パターン①民法上の「任意組合」として組織する

この場合出資者は「組合員」という事になり、全員がベンチャーキャピタルの業務に携わる事になります。また、責任は無限責任となるのでこの方式でファンドが組成されることはあまりありません。

パターン②投資事業有限責任組合契約に関する法律上の「投資事業有限責任組合」を作って投資を行う

この場合出資者の責任は有限責任となり、出資した金額部分についてのみ責任を負うことになります。多くのベンチャーキャピタルのファンドは一般的にこの方式で組成されています。

パターン③商法上の「匿名組合」としてファンドを組成する

ただしこれも「任意組合」と同様に出資者は出資金額を越えて何かあった時は責任を取らなければならない無限責任なのであまり使われる事はありません。

以上のような仕組みによって、ベンチャーキャピタルとそのファンドは作られていますが、個人によるエンジェル投資はともかくとして、ファンドはいくつか解散してその利益を投資家に分配し、元金も返済しなければなりません。

一般的に1つのファンドの存続期間は10年程度であると言われています。つまり、長くとも10年以内には投資先に結果を出してもらって、何らかの方法で投資先の株式を売却する必要があるわけです。このような理由からベンチャーキャピタルが投資をすると、銀行よりもスピーディーに成果を出す事が求められます。

ベンチャーキャピタルは投資先をサポートする仕組みについて

以上のように、ベンチャーキャピタルの仕組みについて説明しましたが、ベンチャーキャピタルは解散期限が決まっているため、投資先の企業に迅速に成果をあげてもらって株式を売却しなければなりません。

よって、ベンチャーキャピタルは投資先に成果をあげてもらうために、サポートします。では、一体どのようにサポートするのでしょうか。経営者側から見たベンチャーキャピタルのフォローの仕組みについて説明します。

まず言う間でもなく、資金を注入するのがベンチャーキャピタル最大のフォローです。ベンチャーキャピタルは投資先が赤字だったとしても流通額や売り上げの絶対値などあらかじめ約束していたKPIが成長していれば株式と引き換えに追加の資金を投入してくれます。

ただし、経営者の視点で考えれば、ベンチャーキャピタルに株式を分散させるという事は、自分の経営権を渡しているという事なので、最悪の場合自分が経営者から解任される可能性もあります。この意味ではベンチャーキャピタルからの資金調達は銀行よりもシビアだという事ができます。

また、資金注入と並んで経営者にとってベンチャーキャピタルの重要なサポートが、経営に関するアドバイスを貰えたり、ベンチャーキャピタルが保有しているリソースの提供を受けることができるということです。

ベンチャーキャピタルの投資方針によって、多少サポートの仕方は違いますが多くのベンチャーキャピタルは定期的に投資家とのミーティングの機会を設けています。ベンチャーキャピタルの運営者の中には過去に起業家として成功した人なども入っていて、その人から直接アドバイスを貰う事ができるので、起業家にとっては重要な機会です。

また、ベンチャーキャピタルが保有しているコネクションやシステムなどの提供を受ける事も可能です。例えばその時に必要な人材についてベンチャーキャピタルと相談して優秀な人材をベンチャーキャピタルとのコネクションの中から探して貰ったり、同じベンチャーキャピタルの投資先やベンチャーキャピタルの関連会社のサービスを安く使用できたりと色々融通を聞かせてくれる事があります。

このように考えれば、経営者にとってベンチャーキャピタルから融資を受けるという事は、金銭的な側面だけではなく、実務的な側面においても頼もしいと言えます。

最期に

以上の様にベンチャーキャピタルの仕組みについて説明してきました。ベンチャー企業は成功したベンチャー企業の経営者やその会社自身が投資をする側に回って次世代の企業を育成するという、独特の仕組みがあります。このような仕組みのおかげで、ベンチャー企業はリスクの高い事業にも挑戦できるし、銀行から融資を受けて少しずつ成長していくのでは到底追いつかないスピードで成長できるのです。

ベンチャーキャピタル側にとっても、投資先の企業が上場した場合の上場益などは莫大なので、ハイリスクハイリターンの投資を積極的に行います。

ちなみにベンチャーキャピタルの多くのファンドは投資事業有限責任組合という形式で組成されており、期日が来れば解散して利益を出資者に分配しなければなりません。そのためにベンチャーキャピタルと経営者は短期的に成果をあげるために二人三脚で企業経営に取り組む事になります。

ベンチャーキャピタルから投資を受けると株式と引き換えに多額の資金を得られるのは、もちろんの事ベンチャーキャピタルが持っているコネクションなどのリソースを自分の会社に使用する事ができるので、経営者にとってはありがたいサポートであると言えます。

ただし、ベンチャーキャピタルと付き合うという事は株式を分散させるという事なので、場合によっては自分の方針を否定されたり、自分が嫌な取締役を送り込まれたり、最悪の場合経営者を解任される場合もあります。このような理由からベンチャーキャピタルからの資金は資本に入るから楽だと思わずに銀行から融資を受ける時以上に慎重に契約を結んだ方が良いと考えられます。