『NTTドコモ・ベンチャーズ』とは?実績や評判を徹底解説!

 

ベンチャー企業がベンチャーキャピタル選びの際に考えなければならない2大要素があります。

1つはどの位の株式と交換でどの位の資金が調達できるのか、株主にした時に安定した株主になってくれそうかファンドの満期が間近ですぐに売却したり、買取を求めてこないかという資本政策に関する要素です。

 

もう1つはどのベンチャーキャピタルもハンズオンの経営サポートを標榜するけれども、結局どこの会社が経営サポートを良くしてくれるのか、どこの会社と一緒ならば事業を成長させる事ができるのかという経営戦略に関する要素です。

 

ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合はこの2つを勘案して、一緒に活動していくベンチャーキャピタルを決めなければなりませんが、特にこれから起業しようとする起業家の卵やプロダクトを制作中のシード期の企業にとっては、そもそも会社運営に関する基本的な知識をサポートしてくれる会社の存在が重要となります。

 

今回紹介するのは通信会社大手のNTTドコモのグループ会社のベンチャーキャピタルであるNTTドコモ・ベンチャーズです。

NTTドコモ・ベンチャーズが他のベンチャーキャピタルと違う最大の点はドコモ・イノベーションビレッジという学校を作って起業家を育成し、シード企業の発掘やベンチャー企業同士の交流に力をいれている点で、これから起業したいという企業によってはとてもありがたい経営サポートとなっています。

 

今回の記事では、このNTTドコモ・ベンチャーズに注目し、どのようなベンチャーキャピタルなのか、概要や実績、イノベーションビレッジとは何なのかなどを徹底解説していきます。

 

 

NTTドコモ・ベンチャーズの概要

まずはNTTドコモ・ベンチャーズの概要について説明します。

NTTドコモ・ベンチャーズは2008年に設立された会社でNTTドコモが100%出資している子会社です。

事業内容は2つで、

  • ベンチャー企業に投資するファンドの運営
  • 起業支援プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」の運営

となっています。

もともとはNTTインベストメント・パートナーズという名前で設立されて当時はベンチャー投資をだけを行っている会社でしたが、2013年に名前をドコモ・イノベーションベンチャーズに変更し、2号ファンドを設立すると同時にドコモ・イノベーションビレッジの運営を開始しました。

そして2013年に現在のNTTドコモ・ベンチャーズに名前を変更しました。

2017年1月にはシリコンバレー支店も開設して海外の企業にも積極的に投資を行っています。

 

NTTドコモが出資をしているベンチャーキャピタルとしては、1999年にドコモが30%の株式を保有しているモバイル・インターネットキャピタルが挙げられますが、ドコモの完全子会社なのはNTTドコモ・ベンチャーズだけです。

 

ちなみに、事業会社がベンチャー企業に投資するコーポレートベンチャーキャピタルには内部留保が多い企業が設立する傾向にあり、通信大手三社は積極的にベンチャー企業への投資を行っています。

例えばドコモの他にもKDDIがKDDIオープンイノベーションファンドを保有しているし、ソフトバンクは既にアリババへの投資やサウジアラビアなどと合同で10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立していますしベンチャー投資を積極的に行っていることは言う間でもありません。

 

NTTドコモ・ベンチャーズのファンドの内容について

では、具体的にどのようなファンドを運営しているのでしょうか。

 

まず一番初めに設立されたファンドが「NTTインベントメント・パートナーズファンド投資事業組合」で2008年に出資金総額100億円で設立されましたが2010年には150億円へ増資されています。

 

投資分野は「情報通信関連分野において今後成長が有望視される様々な技術やノウハウを持つ国内外のベンチャー企業等」という風に設定されていて、ファンドの運用期間は10年なので2018年3月にファンドが満期となる予定です。

 

また、「NTTインベントメント・パートナーズファンド投資事業組合」は2号ファンドも設立されていて、2014年1月に「NTTインベストメント・パートナーズファンド2号投資事業有限責任組合」の名称で同じ投資分野に対して運用期間10年、出資金100億円で設立されています。

 

この他にもNTTドコモ・ベンチャーズは2つのファンドを運営しており、1つは「ドコモ・イノベーションファンド投資事業組合」という名称で2013年2月に出資金100億円、運用期間10年で設立されています。

また同じ名称のファンドとして「ドコモ・イノベーションファンド2号投資事業有限責任組合」が2017年10月に出資金150億円、運用期間10年で設立されています。

両ファンドとも「有望なサービスや技術を保有するベンチャー企業」という風に広く投資対象を設定しています。

また、前者の1号ファンドは同時に「ドコモ・イノベーションビレッジ発のスタートアップ企業 等」と投資対象を設定しているのでシードからドコモの起業家育成プログラムによって発掘できた企業に対して投資したいという思いが強いファンドであると考えられます。

 

NTTドコモ・ベンチャーズの投資方針について

投資の方針としてNTTドコモ・ベンチャーズが大切にしている事はまずドコモとの提携によって相乗効果を生み出せるような企業に対して投資するスタンスです。

純粋なベンチャーキャピタルの場合、利益になりそうであれば自社のグループは会社の事業と関係なくても投資を行うケースもあります。

しかしNTTドコモ・ベンチャーズの場合は、ドコモ/NTTグループ各社との協業または協業可能性が見込める事業に対して投資を行う事を明言していて、EXITの方法も、ドコモやNTTグループ各社に株式譲渡を行う場合がある事に明言しています。

 

また、その他の投資の方針として、国内・海外問わず基本的に全てのステージの企業に投資するけれども、アーリー・ミドルを主要な投資先とするとしています。

出資金の規模は数千万円から2億円程度という事で、アーリー・ミドルに対する投資金額としては妥当と言えます。

原則としてはマイナー投資で、情報権を得られる事が投資の必須条件という風になっています。

 

以上のような理由から、ベンチャー企業に投資をして利益を出そうと言うよりもNTT・ドコモと協業できそうな企業を育てようと言う主旨が強い投資スタンスである事が読み取れます。

 

主なEXIT実績は?

NTTドコモ・ベンチャーズの投資を受けてIPOを果たした企業としては、

  • 広告技術の開発をしているFringe81
  • ソフトウェアテストのサービスを提供しているSHIFT
  • スマホゲーム開発のgumi
  • レコメンドエンジンのサイジニア
  • オンラインレピュテーション・マネジメントのエルテス

などがあります。投資規模に対してIPOの件数は少し少な目かもしれません。

 

株式売却でEXITしている案件としては

  • PostgreSQL関連データベースのEnterpriseDB Corporation
  • クラウドストレージのUpthere
  • クラウド基盤・ソフトウェア開発のミドクラ
  • モバイル決済・端末開発のロイヤルゲート

などがあります。

 

最近の投資実績は?

投資領域をFintech、コミュニケーション、セキュリティ、メディアコンテンツ、BigData、クラウド、IoT・ドローン、マーケティング・広告、メディカル・ヘルスケア、ロボティクス、電力・電池、AI、Enterpriseと幅広くなっています。

最近の投資としてはWeb電話帳割を開発しているPhone Appli、中古不動産プラットフォームのGA technologies、エンドポイントセキュリティプラットフォームのCounterTack,Inc、インフラ点検用ドローンの開発を行うPRENAV,Incなどのシリコンバレー支店が開設された事によりシリコンバレーの企業に積極的な投資を行っています。

 

ドコモ・イノベーションビレッジとは

NTTドコモ・ベンチャーズの特徴は、NTTドコモという大企業を親会社としながらも協業できそうな企業をミドル以降のサービスが整った企業から選ぶのではなく、将来有望そうな企業を発掘するために起業者育成プログラムであるドコモ・イノベーションビレッジを運営している点です。

 

ドコモ・イノベーションビレッジは3つのプログラムから構成されていて、ドコモが提案するテーマに沿って、ベンチャー企業とドコモが協力して新たなビジネスを生み出すVillageアライアンス、週に2回起業家を集めて行う勉強と交流の場であるVillageコミュニティ、社会起業家を育成し、事業立ち上げ、拡大の支援を行うVillageソーシャル・アントレプレナーという3つのサービスを提供しています。

参加できる企業は必ずしもNTTドコモ・ベンチャーズの投資先である必要は無く、一定の要件を満たせばどのような法人でも参加する事が可能です。

 

NTTドコモ・ベンチャーズから出資を受けるためには

まず、どちらかというとNTTドコモと協業する企業を見つけようと言う主旨が強いベンチャーキャピタルなので、自社の事業がNTT・ドコモグループのどこの会社とどのようなシナジーを生み出せるのかという事を明確化した方が良いと考えられます。

また、投資先にNTTドコモ・ベンチャーズを選ぶメリットとしては、NTT・ドコモグループと協業してビジネスが行える事であり、NTT・ドコモグループで協業したい重要な会社があるのなら、ベンチャーキャピタル経由で協業のオファーが行えるので成功確率が増加します。

 

また、アーリー・ミドルが中心となっているので、ビジネスアイデアだけではなく最低限プロダクトが提供できている事が必要だと考えられます。

ただし、ドコモ・イノベーションビレッジのような形でシード育成を積極的に行っているのでアプローチはしやすいと考えられます。

 

ちなみに、以前はドコモ・イノベーションビレッジの中でシード企業の育成を行う「Villageシード・アクセラレーション」というイベントを定期的に開催していましたが、2014年を最後に2017年11月現在新たなシード・アクセラレーションが行われていません。

今後開催されれば、NTTドコモ・ベンチャーズとの接点を持つ絶好の機会だと考えられるので投資を受けたい企業はぜひチェックしてください。

 

最期に

以上のようにNTTドコモ・ベンチャーズについて説明してきましたが、改めてNTTドコモ・ベンチャーズがどのようなベンチャーキャピタルなのか振り返ります。

まず、はじめに抑えておくべき背景は通信会社大手が積極的にベンチャー投資を行っているという事です。アリババなどに投資をして巨額の利益を得たソフトバンクは言う間でもありませんが、KDDIもKDDIオープンイノベーションファンドと言うファンドを所有していますし、NTTドコモも今回紹介したNTTドコモ・ベンチャーズというベンチャーキャピタルを保有しています。

このような事業会社が行うベンチャーキャピタル事業をコーポレートベンチャーキャピタルと言い、昨今のベンチャーキャピタルの増加の理由の1つに内部留保を豊富に保有している企業が続々とコーポレートベンチャーキャピタルを立ち上げている事が挙げられます。

 

コーポレートベンチャーキャピタルと他のベンチャーキャピタルの投資方針の大きな違いは、前者はグループ会社と協業可能性があるベンチャー企業を発掘・育成しようという主旨が強い事です。

NTTドコモ・ベンチャーズもその例外ではなく、投資方針についてNTT・ドコモグループとの協業が見込める企業に対して投資を行う事を明言していますし、グループ会社に株式を譲渡してEXITとするパターンもある事を示しています。

このようにNTTドコモグループと協業できそうな企業を発掘するためにベンチャーキャピタル業務を行っており、2017年にシリコンバレー視点を開設したので、日本の企業に投資するだけではなく積極的にシリコンバレーの企業にも投資を行っています。

 

また、もう1つの特徴はシード育成に力を入れているという事です。NTTドコモ・ベンチャーズではドコモ・イノベーションビレッジと言う起業家育成支援制度を行っています。

ドコモ・イノベーションビレッジの起業家サポートは3つのサービスから構成されていて、ベンチャー企業とドコモグループが協業して新たなサービスを開発する「Villageアライアンス」、起業家の勉強・交流の場である「Villageコミュニティ」、社会起業家を育成。

支援する「Villageソーシャル・アントレプレナー」があります。

2014年までは更に起業家育成プログラムの「Villageシード・アクセラレーション」が開催されていましたが2015年以降は開催されていません。

 

NTTドコモ・ベンチャーズから投資を受けるメリットはNTTドコモグループの企業と協業できる事で、NTTドコモ・ベンチャーズは協業可能性のある企業に積極的に投資を行うので、上手く協業によってシナジー効果が生み出せる企業にとっては、ぜひ投資を受けたいベンチャーキャピタルの一つだと言えます。