イーストベンチャーズとはどんなベンチャーキャピタルなのか?実績や評判を徹底解説!

ベンチャー企業の事業の多くはある程度事業規模が拡大しないと損益分岐点を越えないけれども、急激にシェアを拡大しないと他社との競争で負けてしまうタイプのビジネスモデルが多く成長の為にはベンチャーキャピタルからの投資が必須だと言えます。よって、起業家はプロダクトの開発・事業拡大をしつつ投資家を探さなければなりません。

ベンチャー企業の成長段階はシード・アーリー・ミドル・レイターなどという風に分類されており、各ステージによってベンチャーキャピタルの得意・不得意があります。ステージ別で考えた時に一番投資を見つけるのが困難なのがシード・アーリー初期の時期です。ミドルやレイターになると上場が見えていたり、サービスの成長率や市場占有率などを元に投資を検討してくれるベンチャーキャピタルがたくさんありますし、一度投資を受けた実績があれば他からも投資を受けられる可能性が高くなります。しかし、シード・アーリーの時期はプロダクトがそもそも開発中であったり、売上がまったくないという状態も珍しくありませんので、自社製品を開発しながら、受託開発を行っていたり、資金に余裕が無くて従業員に給料を支払う事に必死になっていて、事業拡大に注力する余裕が無いという経営者も少なくありません。

このようなシード・アーリー初期の会社に投資をしてくれる会社は貴重で、この時期の企業への投資は失敗確率が高いのでほとんどのベンチャーキャピタルはシード・アーリー初期への投資は行いません。

今回紹介するのはイーストベンチャーズというベンチャーキャピタルでこのような起業したての企業の育成が得意なベンチャーキャピタルです。今回の記事では、このイーストベンチャーズに注目し、どのようなベンチャーキャピタルなのか、概要や実績などを徹底解説していきます。

イーストベンチャーズの会社概要

まずはイーストベンチャーズの会社概要からお伝えします。イーストベンチャーズが設立されたのは2010年の事で、ベンチャーキャピタルとしては比較的新しい会社になります。シンガポールのベンチャーキャピタルなので日本国内を中心に投資を行っているわけではありませんが創業者に日本人が名を連ねている事から日本でもベンチャー企業の育成に携わっています。

イーストベンチャーが他のベンチャーキャピタルが大きく違うのは経営者の経歴です。事業会社や金融機関が協業先を見つけたり資産運用の為にベンチャーキャピタルやファンドを設立する事がありますが、イーストベンチャーキャピタルは少し毛色の違うベンチャーキャピタルとなっています。事業会社や金融機関からスピンアウトしたベンチャーキャピタルの場合、マネージャークラスが大企業の生え抜きの社員や金融機関を渡り歩いて来た人材から抜擢される事が多いので、実際にシード、アーリーの泥沼の時期を経験した人材が少ないので、この時期の企業に実践的な経営サポートを行えるベンチャーキャピタルは実は少ないのが現状です。

一方でイーストベンチャーズの経営者層は大企業や金融機関ではなくベンチャー企業出身者なので、シード、アーリー期の企業の経営に対して経験に基づいた実践的なアドバイスが可能であると考えられます。

イーストベンチャーズは東南アジアに強みを持ち世界中の企業に対して投資を行うベンチャーキャピタルではありますが、中心メンバーは日本人で3人いるマネージングパートナーのうち2人は日本人で、松山大河氏と衛藤バタラ氏という2人がイーストベンチャーの設立に大きくかかわっています。

松山氏は、元々アクセンチュアに就職しましたが数年で退職して、ネットエイジの創業に関わっています。ネットエイジと言えば現在マザーズに上場しているユナイテッドの母体となった会社です。ネットエイジは2000年代にはngi group に名称変更して、グループ会社のngi capitalというベンチャーキャピタルから創業直後のmixiやライフネット生命などに出資を行い日本のIT産業の育成に大きくかかわった企業としても有名で、現在もベンチャーユナイテッドという名称でアーリーステージを中心としたベンチャー企業に投資を行っています。
このようにITベンチャーの立ち上げとベンチャーキャピタリストとしての両方の経験を持ったマネージングパートナーを持っている事がイーストベンチャーの強みだと言えます。

また、衛藤氏はインドネシア出身で、大学在学中からイ-・マーキュリーという現在のmixiになる会社でインターンとして転職情報サイトのFindJob!の開発運営に携わり、卒業後そのままイー・マーキュリーに入社してmixiの開発に携わり、2006年にはmixiのCTOとなった人物です。
ベンチャー企業が成長する要素として必須とも言えるのがIT人材で自らプログラミングできる経営者層というのは重要な要素ですが、ベンチャーキャピタル側には実践的なレベルでIT技術に明るい人材がいることは少ないので、マネージングパートナーにこのような人材がいることが支援を受けるベンチャー企業の側から見れば頼もしいと言えます。

イーストベンチャーズのファンドの内容について

イーストベンチャーズのファンドは2017年11月現在6つまで設立されており、2017年には1月に東南アジアのスタートアップ向けに2,750万ドル規模のファンドを設立しています。また、9月には3000万ドル規模のインドネシアのテクノロジー系スタートアップ向けのファンドを設立しています。出資企業などについては公表されていませんが創業から7年で6つのファンドを運営しているという事で、東南アジア系のスタートアップ投資が成功しており、投資家からの信頼も厚い事が読み取れます。

日本ではどのような事業を行っているのか

このようにどちらかというと東南アジアでの活躍が注目されるベンチャーキャピタルですが日本企業に対してはどのように関わっているのでしょうか。もちろん日本のベンチャー企業に対して投資も行っていますが、まず挙げられるのが起業家育成プログラムを運営している事です。イーストベンチャーズはヤフーのベンチャーキャピタルであるYJキャピタルと一緒にアクセラレータープログラム「コードリパブリック」を運営しています。

コードリパブリックとは採択された企業には一律700万円の出資が受けられて、週1回のメンタリング、起業家コミュニティとの交流、デモデイへの参加、オフィススペースなどが利用できる育成プログラムでイーストベンチャーやYJキャピタル、ヤフーから豪華なアドバイザーが集結して事業の成長をサポートする3か月のプログラムです。2017年からは定期採択方式から常時採択方式になり、支援を望むベンチャー企業はいつでも応募できる様になりました。

コードリパブリックの卒業生としては、国際物流業務をITで効率化するサービスを提供するサークルイン株式会社やワンランク上の料理が作れる食材キット宅配サービスを運営する株式会社ブレンドなどがいて、それぞれ卒業後エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから投資を受けて事業を行っています。

コードリパブリックへの参加条件に難しい条件はありませんが、チームに1人以上エンジニアが含まれている事が応募資格になっており、ビジネスアイデアだけではなくそれを実現する為のエンジニアリングの能力を重視している事が読み取れます。

イーストベンチャーズの投資方針について

イーストベンチャーズの投資方針の特徴はシード・アーリー初期のステージのベンチャー企業への投資に特化している事です。よって1社あたりの投資の規模は数百万円から数千万円がボリュームゾーンになりますが、この時期のベンチャー企業に投資をしてくれる、自身もベンチャー企業として成功した起業家が設立したベンチャーキャピタルは、ほとんどないので投資を受けられれば頼もしい存在であると言えます。

この他には東南アジアに強みを持っている事が挙げられます。日本人が中心となって作ったベンチャーキャピタルですが、会社はシンガポールにあり、2017年代に設立したファンドも東南アジア投資が中心となっているので、日本の企業で東南アジア系のマーケットを開拓したいと考えている企業にとってはイーストベンチャーから出資を受けると東南アジアの企業とのコネクションを作りやすいと考えられます。

主な投資の実績は?

現在は東南アジアに注力していて、東南アジアのスタートアップへの投資が成功しているようです。東南アジアで年平均20社以上のスタートアップへの投資を目標にしており、東南アジアには2017年現在80社の投資先があって、運用する資産の規模は、運用開始当初から既に10倍に達しており、投資先のスタートアップが関与する M&A がさらに増えるという風に予想しています。

最近の投資実績としてはテクノロジーに関するメディア・カンファレンス・求人プラットフォームなどを運営しているシンガポールのTech in Asiaや同じくシンガポールのキャッシュバックサイトのShopBackなどに出資を行っています。

日本の企業への投資例としては転職サイトを運用しているビズリーチやクラウドのHRサービスを提供するSmartHR、ビットコインの取引所のbitFlyerなどがあり、フリマアプリのメルカリなどがあり、投資先の中からスマホゲームgumi、ニュースキュレーションアプリのGunosyなどが上場を果たしています。

イーストベンチャーズから投資を受けるには

シード・アーリー期に投資を行う企業として事業の成長性も大事ですが、エンジニアリングの技術を重視していると考えられます。YJキャピタルと共同運営しているコードリパブリックではエンジニアが1人以上チームにいないとプログラムに参加できませんし、講演やメディアの記事などでアイデアを実現するプログラミングの重要性について説明していますので、創業メンバーに優秀なエンジニアがいた方が良いと考えられます。

そうした上で、シード・アーリー初期のベンチャー企業に対して積極的に門戸を開いているベンチャーキャピタルなので、シードアクセラレーションプログラムを受けたりしてアプローチする事が可能です。

最期に

以上のようにイーストベンチャーズについて説明してきましたが、改めてイーストベンチャーズがどのようなベンチャーキャピタルなのか振り返ります。ベンチャー企業にとって重要な事がシード・アーリー初期の泥沼の事業スタートをどのように切り抜けるかと言う事ですが、ベンチャーキャピタル側には大企業の出身者や金融畑でキャリアを重ねて来た人材が多いために、グループ会社のコネクションを使った、販路やパートナー企業など開拓のような実弾は提供する事が可能ですが、実践的に事業を立ち上げたばかりのベンチャー企業をどのように軌道に乗せるかというノウハウを持っているベンチャーキャピタルは実は少ないと考えられます。

しかし、イーストベンチャーのマネージングパートナーで共同創業者である松山氏と衛藤氏はいずれもベンチャー企業出身で、松山氏はmixiやライフネット生命の創業時に投資を行ったngi groupの前身となるネットエイジという会社の創業に携わっていますし、衛藤氏はmixiのCTOとして開発に深く関わっていた人物で、日本のIT産業とベンチャー投資の中心で働いていた人物だという事ができます。このような創業者の経歴からイーストベンチャー自体は2010年に設立された比較的新しいベンチャーキャピタルですが支援を受けられると頼もしいベンチャーキャピタルの1つだと言えます。

イーストベンチャー自体は六本木に支社はありますが、シンガポールの会社で東南アジアのベンチャー企業を中心に投資を行っています。2017年には東南アジア、インドンシアに対するファンドを2つ設立しており、東南アジア系の企業に対する投資の順調さが伺えます。また、日本の企業にも投資をしており、上場したgumiやGunosyなどはイーストベンチャーの出資を受けています。また、YJキャピタルと共同でコードリパブリックという企業家育成プログラムを運営しており、日本のシード企業の育成のためにも活動しています。

シード・アーリー期の会社、東南アジアのパートナー企業を開拓したいベンチャー企業にとってはとても頼もしいパートナー企業である言えますし、起業家育成プログラムも積極的に運営しているので是非アプローチをしたい企業の一つです。ただし、ビジネスアイデアの良し悪しだけではなくそれを実現する為にエンジニアリングの能力を重視しているので、チームにエンジニアがいないと投資を受ける事が困難だと言えます。