ニッセイ・キャピタルとはどんなベンチャーキャピタルか?実績や評判を徹底解説!

金融機関は顧客から預かった預金などを運用する事によって運用益を得ています。運用方法は様々ですが、企業に融資したり、国債を購入したり、上場企業の株式の売買を行ったり、土地を売買したりというのがすぐに思いつく手段ですが、巨大な運用資金がありリスクを取れる企業にとってはベンチャー投資も利回りの良い運用方法の一つです。このような理由から、金融機関だけではなく資産運用を行っている企業は積極的に行っており、その一つが保険会社です。
今回紹介するニッセイ・キャピタルは日本生命グループのベンチャー投資を行っている企業で、一般的なベンチャーキャピタルと大きく毛色が異なっていますが、古くからベンチャー投資を行っており、多くの実績を持ったベンチャーキャピタルの一つです。

今回の記事では、このニッセイ・キャピタルに注目し、どのようなベンチャーキャピタルなのか、実績や評判などを徹底解説していきます。

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ニッセイ・キャピタルの会社概要

まずはニッセイ・キャピタルの会社概要について説明します。ニッセイ・キャピタルは1991年4月に設立されたベンチャーキャピタルで日本生命がすべての株式を保有しています。1991年という設立時期はジャフコなどの一部の老舗ベンチャーキャピタルを除けば、古いベンチャー企業の1つだと言えます。従業員数は2017年時点で22名となっており、ベンチャーキャピタルの中でも比較的規模が大きいと言えます。

ニッセイ・キャピタルの投資方針について

ニッセイ・キャピタルの年度毎の投資方針については毎年日本生命が運用方針について発表しているので、毎年度の注力するテーマはその発表より読み解く事ができます。投資の基本コンセプトは「投資先企業と共に挑戦し続ける」で、通底する投資方針としてはシードステージからレイターステージまですべてのステージの企業に対して投資を行う、IT、製造、医療・バイオ及び流通・小売等、大学発ベンチャーなどの幅広い事業に対して投資を行うとしています。一般的なベンチャーキャピタルは、企業の成長の段階や業種毎に注力する企業群を決定しているので、このようなスタンスで投資を行うベンチャーキャピタルは珍しいと言えます。

特にまだサービスも成立していないようなシード期のベンチャー企業に対しても投資を行う企業は少ないので、シード期のベンチャー企業にとっては魅力的なベンチャーキャピタルの1つだと言えます。

ニッセイ・キャピタルが運用中のファンドについて

運用中のファンドも他のベンチャーキャピタルのファンドとも毛色が違う事に注意が必要です。普通のベンチャーキャピタルの場合、運営会社やそのグループ会社が資金の大部分を出資する場合もありますが、ベンチャーキャピタル以外の投資家も出資を行うのが一般的です。また、運用しているファンドが100億円を超えるベンチャーキャピタルは稀ですが、ニッセイ・キャピタルが運営しているファンドは全て100億円を超えています。

現在は、ニッセイ・キャピタル4号投資事業有限責任組合からニッセイ・キャピタル8号投資事業有限責任組合の5つのファンドが運用されています。それぞれのファンドが設立されたのは、2007年、2011年、2014年、2016年、2017年でそれぞれのファンドは10年から12年程度で満期となります。満期まで一番遠い8号ファンドの満期は2029年末となっています。一般的に不景気の場合はファンドへの出資が集まらないのでファンドの設立件数が減りますが、ニッセイ・キャピタルの出資金は日本生命の資産運用資金なので、好景気・不景気に関わらずファンドを組成して積極的に投資していくスタイルだという風に考えられます。

主なEXIT実績は?

これまで説明した通り、ニッセイ・キャピタルは日本生命の豊富な資産運用資金を原資として積極的な投資を行っているのでEXITの実績も豊富です。2016年末までに、累計で251社がニッセイ・キャピタルの投資を受けて上場を果たしています。創業26年なので1年当たり平均10社弱のペースで投資先がIPOしており、一般的なベンチャーキャピタルの投資実績と比較すると、著しい実績をあげていると言えます。
ちなみに、最大手かつ最老舗のジャフコの場合は2016年末までに創業45年で約990社なので1年当たる22社が上場している計算になりますが、ニッセイ・キャピタルは従業員約20名程度に対して、ジャフコは約150名、運用中のファンドは36ファンドで出資金総額は4300億円を超えるので、従業員や出金あたりのIPOの数で見ればジャフコよりも効率よく運営されているファンドであると言えます。

最近ニッセイ・キャピタルがIPOに関わった企業の例としてはつくば大学からスピンオフとして設立されたロボティクス事業を行うCYBERDYNEや牡蠣の養殖・卸売・飲食店開発などを行っているヒューマンウェブ(現ゼネラル・オイスターグループ)、再生可能エネルギー発電所の新規開発・運営管理を行うレノバなどが上場を果たしています。一般的なベンチャーキャピタルがIPOに関わった案件はインターネットやITに関連する事業の事が多いですが、ニッセイ・キャピタルの場合は先ほど説明したヒューマンウェブや航空会社のスターフライヤー、消火関連の設備・薬剤などの設計・開発・製造・保守などを行っているドライケミカルなど普通のベンチャーキャピタルが投資を行わないような業種の企業についてもIPO実績があるのが大きな特徴です。

最近の投資実績は?

上記で説明した通り、普通のベンチャーキャピタルが関わらないような幅広い業種のIPOに関わっているので当然、様々な企業に投資をしています。ちなみにジャフコ、グロービズキャピタルパートナーズ、インキュベートファンド、ニッセイ・キャピタルがベンチャーキャピタルの中でも出資件数が多いと言われています。
ニッセイ・キャピタルの2016年末までの創業からの累計投資先は1135社としており、1年間あたり約44社の企業に投資している事になります。一社あたりの投資金額は5000万円から5億円だとしていますが、シードからレイターまで総合的に投資を行うので企業のステージによって投資額のばらつきは大きいと考えられます。ちなみに2016年の実績としては39社に41.5億円の投資を行っているので1社あたりの平均投資額は1億円と考える事ができます。

41.5億円全体のステージ別の投資比率としては、シード11%、アーリー37%、ミドル40%、レイター12%となっています。新規で投資を行ったのは29社で金額は27.6億円で内訳は、シード17%、アーリー50%、ミドル22%、レイター11%となっています。追加で投資を行ったのは10社で金額は13.8億円でアーリー9%、ミドル77%、レイター14%となっています。全体で見ると、アーリー・ミドルの割合が多いですが、新規投資はアーリーへの投資が多く、ミドルへの投資は追加投資の割合が多いと考えられます。アーリー・ミドルと企業のステージがあがっていく事によってしっかりと追加投資を行ってくれると考えられます。またシードでの投資も4億円程度行っているのでシードの育成も積極的に行うスタンスだと考えられます。

業種別の投資金額についても同様に幅広い業種に投資を行っていて、41.5億円のうちITが44%、製造業が12%、医療・バイオが26%、流通・小売りが17%、不動産・金融等が1%となっています。ITの比率が44%と一番高くなっていますが、通常のベンチャーキャピタルの場合8割近くはITに関して投資を行っているはずなのでそれと比較するとIT投資の割合が低めのベンチャーキャピタルであると言えます。特に流通・小売りの比率が17%というのは一般的なベンチャーキャピタルの投資では考えられない数字であると言えます。

シード期のベンチャーの育成にどのような施策を行っているのか?

ニッセイ・キャピタルの魅力の一つはシード期にベンチャー企業にも積極的に投資を行っている事ですが、ニッセイ・キャピタルはシード期のベンチャー企業育成のためにどのような取り組みを行っているのでしょうか。例えば2017年10月にはアクセラレーションプログラム「50M」というプログラムを発表しました。
これは高いポテンシャルのビジネスアイデアや研究技術を持つ起業家や、資金不足で開発に集中できない起業家などを対象に「50M」という最大5か月間の企業家育成プログラムに参加してもらって、プログラム参加時に新株予約権で500万円無事に卒業した際に4500万円のシード出資を行うというプログラムです。
起業家育成プログラムとして投資が行われるだけではなく、様々なスタートアップの事業拡大を支えて来たキャピタリストが週に1回のペースでメンタリングを行い、必要に応じて、他の支援中のスタートアップの人材の協力を得られるシード段階の企業にとってはありがたいプログラムとなっています。この他にも大学発の特許技術などを世間に還元するために大学発新産業創出プログラムなどにも参加しており積極的にシード期のベンチャー企業の開拓に取り組んでいます。

ニッセイ・キャピタルから投資を受けるには

積極的に、企業のステージと業種を問わず投資を行う投資スタイルなので、業種の性質上、既存のベンチャーキャピタルにあまり相手にされてこなかったベンチャー企業にもチャンスをくれる会社だと言えます。また、IPOの実績も豊富でシードからレイターまでどのステージに対しても投資を行ってくれるのでベンチャー企業にとって心強い味方だと言えます。

ただし、もちろん積極的にどんな企業にも投資を行うといっても、経営者の資質や、ビジネスモデルありきの話で、成長の見込みのない事業に対しては投資を行わないと考えられます。ニッセイ・キャピタルから投資を受けるためには色々な方法が考えられますが、起業家のアクセラレーションプログラムも開催しているのでそれに参加するというのも一つの手段ですし、ピッチに参加したり、直接ニッセイ・キャピタルに申し込みを行ったりという方法も考えられます。いずれにしても他のベンチャーキャピタルからの融資を狙う可能性も高いので事業計画やプレゼンの精度が高めておいた方が良いでしょう。

最期に

以上のように、ニッセイ・キャピタルについて紹介してきましたがあらためて内容を振り返ります。ニッセイ・キャピタルは1991年に創設された比較的古参のベンチャーキャピタルで日本生命のグループ会社です。一般的なベンチャーキャピタルとは少し変わっており、ファンドには全て日本生命が出資しており、その他の事業者や金融機関、独立行政法人は出資していません。このように日本生命の運用資金でベンチャー企業への投資業務を行う為だけの会社なのですが、2017年現在、5つのファンドが運営されており、5つともそう出資金額は100億円を超えているので、資金額では他の一般的な規模のベンチャーキャピタル以上だと言えます。
なお、一つのファンドの満期はだいたい成立から10年から12年程度に設定されていて、一番長い8号ファンドで2029年に満期の予定となっています。

ベンチャー企業側から見たニッセイ・キャピタルのベンチャーキャピタルとしての魅力は投資の幅の広さです。通常、ベンチャーキャピタルの投資の8割以上はIT関連の業種に対して行われるのですが、ニッセイ・キャピタルの場合は半分以下で、通常は投資しない小売・流通のような業種にも積極的に投資を行っています。2016年だけで約40億円を約40社に投資しており、創業からの累計投資企業件数は1100社を超えています。

また、業種だけではなく幅広いステージの会社に投資しており、シード期の企業に対しても投資した金額の1割程度を投資し、起業家育成プログラムなどで積極的にシード期のベンチャー企業まで開拓しようとしています。

このように積極的な投資を行っているのでIPOの件数も多く、累計250社のIPOに関わっています。その中には、牡蠣の養殖・卸売・飲食店開発などを行っているヒューマンウェブや消火関連の設備・薬剤などの設計・開発・製造・保守などを行っているドライケミカルなどITに関係しない幅広い業種の企業がある事が特徴です。

ただし、積極的な投資を行っているからと言って簡単に投資をしてくれるわけではありません。少ない人数で大量の投資案件を処理しているので、投資案件に関する目線は他のベンチャーキャピタルよりもシビアであるという風に考える事もできます。他のベンチャーキャピタルと同様に、事業計画やプレゼンの内容を作り込んだ上で交渉に臨んだ方が良いでしょう。