手形割引とは?
3つの流れを押さえて、手形を即現金化する!

手形割引とは

手形割引とは、取引先から受け取った手形を支払期日前に現金に変える仕組みです。将来の現金を今すぐ使いたい場合に利用できますので、法人の資金調達方法の1つとして需要があります。手形割引を利用する際は、手形に裏書譲渡して金融機関や手形割引業者に買い取ってもらいます。なお、その時点から満期日までの利息相当分や手数料が差し引かれます。手形割引を依頼した人を割引依頼人、手形を割引いた人を割引人、割引かれた手形を割引手形と言います。

企業間での決済手段は現金だけではありません。

昔から企業の決済手段として現金取引と並んで使用されていたのが「手形」です。手形を支払いを約束すると書類で、決められた期限を過ぎた後に銀行に持っていけば、あらかじめ決められた金額が銀行から受け取れるようになっています。

もちろん、手形を持てば持つほど企業のキャッシュフローが悪化しがちです。現金であればすぐにお金が入る所、売上が手形化される事によって、償還期限までの間に資産が塩漬けされてしまうからです。

このように、手形を貰っても手元資金は増えないので、手形を即現金化したいという企業の希望に応えるのが手形割引です。本記事では手形割引とはどのような資金調達のか、その概要について説明します。

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「手形」とは?売掛金とどう違うの?

まずは手形の性質について考えます。

手形は何か月後にお金を支払いますよという約束を証明する書類ですが、このような性質は売掛金も保有しています。

すなわち、売掛金も支払い期限が決められているので、手形を発行する必要はないのではないかと考える事ができます。

確かに、手形も売掛金も現金を受け取れるのは手形の支払期日が到来した後になりますが一見同じように見えますが、手形の発行には銀行が絡んでいるのが大きな違いです。

すなわち、売掛金は売掛金を保有している企業と買掛金を保有している企業の約束事なので、売掛金を支払い期日までにきちんと支払わなくても、支払わなかった企業は特にペナルティを受ける事はありません。

しかし、手形を発行した場合は手形を銀行に持っていけば、債務を負っている企業は支払いたくないと思っても強制的に銀行口座より手形の代金が支払われます。

また、仮に銀行口座に預金が不足していたりなどの理由で、手形が落ちなかった場合は大変な事になります。

きちんと決済されなかった手形を不渡り手形と言い、半年に二度不渡りを出すと銀行の当座預金取引・融資を利用する事ができなくなります。

また事実上一回でも不渡りを出せば融資を受けられなくなる可能性が非常に高いのです。

このように考えると、売掛金は支払わなければならない企業の資金繰りによっては約束を反故にされたり、期間を延長せざるを得ない場合もありますが、手形は確実に代金を回収できるのです。

手形割引とファクタリング

上記のように、手形と売掛金は同じような性質を持っていますが、支払いの強制力が手形の方が格段に強力になっています。売掛金を即現金化したい時にはファクタリングを行います。

すなわち、売掛金という債権を第三者に売却する事が可能なのです。もちろん、売掛金よりも手形の方が確実にお金を回収できるので、手形も第三者に売却する事も可能です。

手形を売却する場合はファクタリングとは言わずに、手形割引と言います。

売掛金は第三者に売却するだけではなく、売掛金を担保にして融資を受ける事も可能です。手形も同様に手形を担保にして融資を受ける事が可能性、このような資金調達手法を手形貸付と言います。

ちなみに、ファクタリングの場合は原則として債権を買い取ってもらえば、その債権が回収不可能になっても利用者は責任を負わないノンリコースファクタリングが原則となりますが、手形割引は違います。

手形割引の場合、手形は不渡りとなれば割引を依頼した人が責任を負う事になります。つまり、ファクタリングは債権回収ができなくても利用者には関係ないのに対して、手形割引の場合は利用者が責任を負わなければならないのです。

手形割引と手形貸付はほぼ同じ?その違いについて

ちなみにこの時に気になるのが手形割引手形貸付の違いです。手形割引は手形の額面から割引した金額で手形を買い取って貰う資金調達方法、手形貸付は手形を担保にして融資を受ける資金調達方法で形式上は全く別の資金調達手法です。

しかし、割引した手形が不渡りを起こした場合、依頼者が責任を取らなければならないのならば、債権回収リスクは手形割引であっても、手形貸付であってもほとんど変わりません。つまり実務上、手形割引も手形貸付もほとんど違いはないのです。

では、手形割引も手形貸付も実務上まったく違いはないのでしょうか。もちろん、いくつかの違いは存在します。例えば、一度に複数の少額の手形を用いる場合、手形割引にするとその手形1枚1枚の企業の支払い能力の調査をしなければならないし、金額が小さいので割にあいません。このような場合は、手形1枚1枚の調査が必要ない手形貸付による融資が行われやすいのです。

また、手形割引を利用した方が企業の財務諸表の見栄えが良くなります。手形割引の場合は手形は資産の部の受取手形が資産の部の現金に代わります。

手形貸付の場合は、受取手形自体は変わらずに、資産の部の現金が増える代わりに負債の部の借入金が増加します。

殆ど効果は同様ですが、後者の方が負債の部が増えてしまうし、自己資本比率も低下してしまうので財務諸表の見栄えが悪くなってしまいます。

また、手形割引を行う事によって本当は手形の回収リスクが存在するのに財務諸表上は受取手形が減って、現金が増えているのでその回収リスクが財務諸表上に反映されなくなります。

このように財務諸表上から見えなくする事をオフバランス化と言い、企業価値を高める為の手法として用いられる事があります。

ちなみに、手形割引と手形貸付どちらの手数料が少ないのかが気になる事ですが、ファクタリングの手数料の相場と比較すると、どちらも安価な手数料です。

手形割引の場合は手形の与信にもよりますが、手数料は2~7%、手形貸付の場合は、手形貸付を申し込む企業の与信状況にもよりますが通常の銀行融資程度だと考えられるので0.5%~4%程度だと考えられます。

おそらく大半の企業にとっては手形割引よりも手形貸付の方が資金調達コストが低くなるのではないかと考えられますが、手形貸付は貸付なので融資限度額に影響がある可能性があるので注意が必要です。

ちなみに、手形割引によって発生した損金は手形売却損として損金計上する事が可能で、手形貸付について手形は担保になりますが手形の額面と実際の価値は変わらないので、通常の担保付き融資と同様の会計処理になります。

手形割引の流れ

以上のように手形割引の性質について調査してきましたが、手形割引はどの様な流れで行われるのでしょうか。手形割引には3つのステップがあります。①審査、②見積もり、③契約です。ここではそれぞれの流れに分けて紹介します。

①審査

まずは手形割引を行っている会社に手形割引の問合せをします。付き合っている銀行でも手形割引はしてくれますし、銀行以外にも手形割引をしている専門会社もあります。

問い合わせをするとまずは、割引して欲しい手形の審査となります。

この時に必ずしも手形を送ったり店舗に行かないと審査してもらえないというわけではありません。

手形を振り出した企業の名前や住所振り出した手形の条件と金額がわかれば手形の審査は行えるので、手形自体は必要ありません。また必要に応じて追加の書類を求められる事もあるので適宜対応してください。

②見積もり

情報が揃うと手形割引の手数料の見積もりがでます。初めて手形割引を行う場合は複数の会社から見積もりを貰った方が良いと考えられます。

なお、手形割引業者と銀行それぞれに見積もりをとった方が良いでしょう。

大抵の場合手数料は銀行の方が安いのですが、銀行は手数料が安い分、手形割引の枠を企業毎に定めていたり、手形割引を受けたい企業自体の与信を見る傾向もあります。

また銀行は手形割引事業者よりも審査に時間がかかる事が多いです。すぐに手形を現金化したいという場合は手形割引業者に頼んだ方が良いでしょう。

③契約

手形割引を行ってもらう先が決定すればその業者と手形割引の契約を結びます。手形の裏書のみでお金を振り込んでくれる企業もありますし、手形取引契約書を求める事業者も存在しますので、各事業者の言う通りに行ってください。

もちろん、手形の見積もりを提出する段階には事業者によって手形の原本を要求されることはありませんが、契約が成立した時には、手形の原本割引人に渡さなければなりません

この時に手形の真贋はもちろんチェックされますので偽物の手形を換金するという事はできません。

なお、先ほど述べた通り手形割引が成立しても債権回収ができなければ、契約を取り消して代金の返還を要求さてる場合がある点については注意してください。

一般的に銀行の審査と比較してそれほど時間はかかりません。早い事業者だと即日現金化可能な事業者も存在します。

ちなみに手形割引に関わる者について手形割引を依頼した人の事を割引依頼人、手形を割り引いた業者の事を割引人と呼びます。

手形割引のメリット・デメリット

ここまで手形割引について説明してきました、改めてメリット・デメリットを整理します。まずメリットとして挙げられるのがキャッシュイン早くする働きです。

手形割引を行う事によって数か月後にならないと現金化できない債権を今すぐ現金化する事が可能です。ただしデメリットとして手数料は必要になります。

ただし手数料は数パーセントなのでファクタリングのように長期的に見れば著しく資金繰りを悪化させるという事もありません

また、手形割引をしても手形が落ちなければ、利用者は手形の代金を保証しなければならないので結局の所、債権回収リスクは利用者側が負担しなければならないという事には注意が必要です。

最後に

以上のように手形割引について説明してきました。手形とは期限までにどの位の金額を支払いますという証文の事で、正確に言えば手形割引が行われるのは手形の中でも商業手形になります。

売上代金の代わりに手形を貰っただけでは、貸借対照表上の流動資産は増加しても現金が増える事はありません。

よって、直近の資金繰りに困って現金が不足してしまえば、いくら貸借対照表の流動資産の合計額大きくて、損益計算書上黒字になっていたとしても倒産してしまいます。

このような事情から手形をずっと持っていても仕方ないので、手形の満期期限前に現金を手に入れたいという事業者は多く存在します。

このような事業者に対して行われるサービスが手形割引で手形を手形割引業者に手数料を支払って売却し現金を手に入れる方法の事を手形割引といいます。

この手形割引とよく比較されるのがファクタリングです。どちらの資金調達手法にも一長一短がありますが、一般論としてファクタリングの方が手数料が高くて、手形割引の方が手数料が低くなります。

というのも、手形割引の方が確実に債権を回収できるからです。ファクタリングの売掛金が相手がごねれば回収不能になる可能性はありますが、手形は銀行に持っていくと相手の銀行口座にお金がある限り強制的に引き落とし可能ですし、

仮に手形が落ちなければ不渡りという事になり、1回でも不渡りを起こしてしまえば実質的に銀行からの融資が受けられず倒産してしまうので、債権回収の確実性が高いのです。

またまたある程度の事業規模や実績が無いとそもそも手形を発行できる当座預金を持つ事ができないので、当座預金を保有している企業が発行しているという事である程度債権回収の確実性が見込めます。

ただし、ファクタリングは債権の所有権を相手に移した後に債権回収になったとしても、元の利用者に対して元金を請求できないノンリコースファクタリングが主流なのにたいして手形割引については手形が落ちなければ手形を売却した事業者に対して元金を請求する事が一般的になっていますので注意してください。

ちなみに、同じような資金調達手段としては手形貸付が考えられます。

手形割引は手形を期限前に額面より安くして売却する事で、手形貸付は手形を担保にして融資を受けることなので形式上まったくの別物ですが、手形割引をしても手形が不渡りになったら利用者が責任を取らないといけないので、実際に発生する効果にはほとんど違いがありません。

手数料は一般的に手形割引の方が高くなりがちですが銀行の融資枠に影響を与えずに保有現金を増やす事が可能です。

なお、手形割引は銀行融資と比較してスピーディーに資金を調達する事が可能で、手形の審査を行って割引事業者は見積もりを出し、その見積もりに納得して契約すれば手形を譲渡して代わりに現金を手に入れます。

銀行に依頼するべきか専門業者に依頼すべきか一長一短ありますが、銀行は手数料が安い代わりに審査機関が長く、専門業者は手数料が高い代わりに審査が早い傾向にあります。

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