創業融資は絶対に獲得するべき!審査を通過するための創業計画書の書き方ポイント3つ

一般に起業するのは大変だと言われていますが、実は最も大変なのが起業後に経営を軌道に乗せるまでの初期の期間です。

この期間はどれだけ頑張っていても赤字である事が多く、驚くべき速度で資金が流出します。

将来性のある事業でもこの赤字期間に耐えられる資金的余裕が無く倒産する企業も少なくありません。

創業時にまとまった資金を用意するという事は非常に重要なのですが、現実的には創業時の資金調達手段は多いとは言えません。

多くのケースでは自己資金や親族・友人からの借入などで資金を調達しています。

まとまった資金を確保するために創業時の資金を銀行から調達したいところですが、融資リスクが高い創業間もない企業にはほとんど融資が行われないのが事実です。

例外的に創業時の資金調達に利用できるのが日本政策金融公庫の創業融資です。

日本政策金融公庫は国が出資する銀行で利益の追求ではなく、国策や公益に沿って事業活動を行っているので、起業家支援の為にリスクの高い融資も行っています。

日本政策金融公庫の創業融資の審査を通過するためのポイントを紹介します。

日本政策金融公庫の創業計画書のフォーマットに頼りすぎない

まず、一番重要な事が創業計画書のフォーマットに頼りすぎないという事です。

創業計画書のフォーマットは日本政策金融公庫のWEBサイトから確認する事ができますが、A3表面1枚程度の分量となっております。

そのフォーマットを埋めれば基本的な内容は充足する事ができますが、紙面が小さいために必要な情報が不十分となりがちです。素直に政策金融公庫のフォーマットに従って事業計画書を作成し提出すると、融資を受けられる可能性が少なくなってしまいます。

例えば、事業の優位性を検討する為に重要な取扱サービスの内容・セールスポイント・販売戦略・競合・市場環境の状況などの記入欄は各三行程度しか設定されていません。

しかし、しっかりとした創業計画を行っていればこの欄だけで何ページ分も説明したい事があるはずです。

また事業の見通しの数値計画も創業当初と1年後軌道に乗った場合の2パターンしか用意されていませんし勘定科目もごく簡単なものになっています。

こちらも創業計画を行っていれば月毎に三年程度の数値計画は算出しているはずですし、経費についても創業計画書の勘定科目よりも詳細な経費のシミュレーションを行っているはずです。

このような事から言える重要な事が、創業計画書のフォーマットに頼りすぎないという事です。

創業融資を受ける際には指定通りのフォーマットを埋める事も必要ですが、そのフォーマットだけでは確実に計画の根拠が伝わらないので別途資料を用意し、どれだけ経営計画を綿密に作り上げているかという事について説明した方が効果的だと考えられます。

数値計画は細心の注意を払って作成する

次に重要なポイントとして数値計画は細心の注意を払って作成する必要があるという点が挙げられます。

創業計画の中でビジネスモデルの説明なども行いますが、担当者(銀行員)は業界のプロではないので「融資希望者がどの位の専門性や技術を持っているか?」や「展開しようとしているビジネスモデルがどの位上手くいきそうなのか?」が判断できません。

しかし、銀行員はお金回りのプロなので数値計画の不備や妥当性には詳しく検討できます。

つまりしっかりとしたビジネスモデルの説明と共に、銀行員が専門性を持つ数値計画は特に細心の注意を払って作成する必要があるという事です。

これは日本政策金融公庫の創業融資だけに関わらず、すべての銀行融資に関して共通項だと言えます。

銀行員は業種毎の平均的な粗利率や営業利益率、人件費率などは掴んでいますので、その相場より高かったり低かったりする場合は当然気になります。

相場の指標を知った上で相場の指標より高かったり低かったりする場合は、その根拠を説明できるようにしてください。

何故その数値になったのかという根拠を合理的に説明できなければ、甘い数値計画だと判断されチェックも厳しくなります。

また安定成長路線でありつつも、しっかりと利益が確保できるような数値計画を作成する必要があります。

銀行チェックを恐れるあまり保守的な経営計画になってしまうと、最終的に黒字幅が少なくなり返済原資の少ない数値計画に成りかねません。

銀行のチェックは通過できても、返済が困難な事業計画という事で審査が厳しくなります。

一方で急激に売上が上がるような数値計画は各数値に対して合理的な説明ができても、感覚的に「どこか間違っていないか?」という目で見られてしまいます。

手堅い成長をシミュレーションしつつ、きちんと返済原資となる利益を確保できるような数値計画を作成する必要があります。

要求金額すべてが通るわけではない

正確な経営計画は創業融資を通過させるために重要ですが、事業計画が正確であれば希望した融資額が全額融資される訳ではありません。融資するべき金額は別途審査担当者が精査し直します。例えばキャッシュフローが1年間位マイナスになるからといって運転資金を多めに見積った申請でも、保守的な審査担当者がみれば運転資金は3か月分程度しか融資されませんし、利率や返済スケジュールについては融資をする側の相場感があるのでそちらに合わせるのが基本となります。

このような理由から多少受け取れる融資額が下振れした場合でも事業運営が行えるような経営計画を用意するべきでしょう。

取引予定先を確保している場合はしっかりアピール

審査担当者も起業家も一番心配する事は、起業後に売上が立てられずにいつまで経っても損益分岐点を越えずに赤字を垂れ流す状態に陥ることです。起業前からすでに売上見込みが立っている場合は、その実績をアピールする事で事業計画の正当性を裏付ける事ができ、返済の原資の存在をアピールする事が理想です。契約書類などの書面を用意できるのであれば用意しておくことをおすすめします。

その為にも現在勤務する会社は円満退職し、可能であれば起業した会社に顧客を引き継げるような状態である事が理想です。

与信には気を使って滞納金は精算しておく

一般論として国や地方自治体などの公共団体が関連する融資を受ける場合の場合税金の未納や健康保険の滞納がある場合、それが融資不認可の理由となりかねませんので、未納の税金などがある場合は早めに対応しておくべきです。

地方自治体の起業セミナーに参加する

地方自治体の創業に関する制度融資を利用する場合条件として自治体が指定する起業セミナーに参加したり、一定の講習を受ける事が義務付けられていたり、講習を受ける事が審査に有利働く場合があります。条件や内容は地方自治体によって異なりますので、起業を計画している地方自治体に問い合わせてどのようなサポートが受けられるのかを確認することをおすすめします。

創業者が主体的に計画書を作成する

最期にこの計画は創業者が主体的に作成する必要がある事に注意してください。

一般的に創業融資を獲得するためには三つのポイントがあると言われていて、経営者の資質、ビジネスモデルの内容、自己資金の額が重要となっています。

自己資金

自己資金は創業時にどの位の資本金を用意できるかという事です。多くの創業融資は融資上限を「自己資本の何倍まで」というように設定しています。資本金は会社の成否を分けるだけではなく、その事業への取り組みの真剣さを評価する重要なバロメーターなので、創業融資の重要な審査項目の1つとして捉えられています。

資本金1円からでも株式会社を設立できると言いますが、本当に1円で会社を設立すると創業融資は受けられませんし、創業直後から利益を上げなければ債務超過に陥るので数百万円単位で自己資金は用意するべきでしょう。

経営者の資質

経営者の経験や能力などの資質も重要な審査項目です。会社の実績がまだ存在しない創業融資の場合経営者の経験・能力を元に会社の成功可能性を検討します。例えば過去に起業する業界で働いた経験はあるのかや、働くのに必要な資格を保有したり、関係学部を出ているのかなどを見る事で成功の可能性を検討します。

ビジネスモデルの内容

審査は融資の専門家が行うので起業する各業界の細かい市場性やルールが判らなくてもビジネスモデルが妥当かどうかは審査する事ができます。ここで言うビジネスモデルとは主に目標とする数値計画の事ですが、業界の粗利益率と比較して著しい利益率を想定していればその根拠を求められますし、必要経費を安く見積もっていればなぜなのか聞かれます

仮に経営計画の甘い所を指摘された場合、明確な説明ができなければビジネスモデル実現の可能性は低いと判断されます。創業融資が必要であれば起業家自身がビジネスモデルの作成に全力を注ぎ込む必要があります。

例えば、財務関係に疎い人が専門家の協力を受けて数値計画を作成する事などは良いですが、創業の動機や、その事業に対する自分の強み、行おうとしているビジネスモデルが競合と比較してどのような強みを持っているかなどはきちんと自分で考えて、自分の言葉で説明できるようにしておいた方が良いでしょう。

最期に

日本政策金融公庫の創業融資の審査を通過するためのポイントを紹介しました。

日本政策金融公庫の創業融資は創業資金獲得方法の中でも一般的な方法で多くの起業家が申し込みをしますが、審査通過率は50%程度だと言われています。

この50%程度が多いか少ないかは議論の分かれる事ですが、しっかりとした創業計画書が作成できていない申込者が多いのも事実です。

つまり、きちんと調べて事前に対策を行えば創業融資を獲得する事は、それほど難しくはないと考えられます。

創業計画書の作成ポイントについては本文中で紹介した通りですが、最後に担当の行員と上手にコミュニケーションを取る事の重要性について説明します。

どれだけ自分にとって素晴らしい創業計画書が出来たとしても、決裁するのは担当の行員の上司や決裁部門なので、申込者は担当の行員と二人三脚で融資を通すという意識が必要になります。

つまり、担当の行員が上司に創業計画の説明がしやすいように利用者がお膳立てを行う必要があるのです。

このために創業計画書について質問されれば答えられるというだけではなく、疑問に持たれそうな点も含めて全て創業計画に反映し、後から担当行員が資料を見返して上司を説得できるレベルの資料の作り込みが必要となります。

誰もが創業計画の作成初心者であり、誰もが奇抜なビジネスモデルで創業する訳ではありません。

多くの場合、創業計画の内容自体は突き詰めればほとんど差はありません。この、行員が上司を説得しやすいように資料を用意する気遣いが審査を通過するか否かを決める重要なポイントだと言えるでしょう。