信用金庫のデメリットとは?信用金庫との上手な付き合い方

信用金庫というと、銀行による資金調達の中でも貸付金利が高いので敬遠しがちだという人も多いのではないでしょうか。あるいは、地域に密着していて、営業マンのフットワークも軽いので地銀よりも重宝しているという経営者や経理担当者も多いのではないでしょうか。
本記事ではどうすれば信用金庫と上手に付き合えるのか?という観点から信用金庫のデメリットについてなぜこのようなデメリットがあるのか?そのデメリットをカバーしてどうすれば信用金庫と上手く付き合えるのかについて説明する事を目的としています。

信用金庫は金利が高い?

まず、多くの人がデメリットとして考えているのが、信用金庫の金利は高いのではないかという事です。確かにメガバンクからのプロパー融資の場合金利が年率0.5%前後である事も珍しくありませんし、地方銀行から融資を受けた場合でも1%台、優良企業ならば年率1%を切る利率でも融資を受けられる可能性があります。この様な銀行と比較すると、信用金庫の利率は年率2%前後で、場合によっては信用保証協会の保証を求められる事があるのでトータルの年率では3%を超える事も考えられます。

もちろん、銀行融資だけではなく、ビジネスローンまで込みで資金調達の手段として考えると、ビジネスローンの年率は銀行系のビジネスローンの場合でも7%前後の金利になると想像できますし、ノンバンク系のビジネスローンで融資を受けるならば年率15%を覚悟しなければなりません。この様な利率と比較すると確かに信用金庫の融資の金利はお得であると言えますが、それでも通常融資と比較すると少し割高感があります。なぜ信用金庫の金利は銀行と比較して高いのでしょうか。

一番に考えられるのが、取り扱い金額によるコストメリットの違いです。
保有している金融資産が多ければ多いほど、小さい利益率でも利益を出せるようになるので、信用金庫よりも地方銀行、地方銀行よりも都市銀行の方が保有資産が多いので低い利率でも利益をだせるのではないかという事です。確かに信用金庫の方が地方銀行よりも利率の高い理由の一部にはこの様な事がありますが、それならば、都市銀行も地方銀行も信用金庫と顧客層が被りそうなのに実際には、都市銀行、地方銀行、信用金庫は顧客層を分けて住み分けをしています。なぜ、住み分けが可能なのかというと融資の規模が違うからです。

例えば、同じ1億円の融資を行う場合でも、100万円を100社に融資するのと、1億円を1社に融資するのでは付随するコストが違います。
融資をする為には銀行の営業マンが事前に訪問したり、稟議を銀行内に上げたりと様々な作業を行いますが、100万円の融資を行う場合も1億円の融資を行う場合にも、そのコストはほぼ同じで融資額が100倍違うなら付随コストが100倍になるという訳ではありません。
同じ1億円を融資する場合でも、融資に関する付随コストは1億円とするならば、前者の融資と付随コストの合計額は1件1億1万円、後者の融資と付随コストの合計額は100件101万円になるので、付随コストの分だけ後者の貸し付け原価は高くなってしまいます。これが、信用金庫の金利が高い本質的な原因なのです。

メガバンクは1億円を1社に貸す銀行ならば、100社に100万円ずつ貸し出しするのが信用金庫の融資の仕方です。このような貸し方をすると付随コストの分だけ貸し付けの原価が高くなってしまうのである種で信用金庫の利率が高いのは、中小企業向けにしっかり小口融資を行っている証拠だとも考える事ができます。

ちなみに、この様な理由で信用金庫の利率が高いのならば、メガバンクの方が信用金庫よりも利率が低いので一律で優れているというわけではないという事がわかります。
メガバンクは利率が低い分、平均の貸付額が高いのでどうしても中小企業や零細企業にとっては使い勝手の悪い融資です。また、貸付額が高いので中小企業や零細企業に対してメガバンクの営業マンが積極的に営業してくることはありませんし、借りようとしても審査ではねられてしまう可能性が高いのです。

また、金利が安いと言うことはその分だけ貸し倒れた時の影響は、金利が高い信用金庫よりも大きいので、銀行は貸し倒れを防ぐために、貸し倒れの可能性がある会社に融資を行う事をとても渋りますし、場合によっては一度融資したお金を貸しはがしてしまう可能性があります。
同じ金融機関でも信用金庫は銀行よりも地域密着型で公益性が高い非営利法人として運営されているため、貸しはがしを行う可能性は低いので、この信用金庫の金利の高さは、貸しはがしの可能性とのトレードオフのために設定されているという風に、経営者や経理担当者の目線からは理解する事ができます。

このように信用金庫の金利が高い理由を分析してみると、確かに信用金庫の金利の高さはデメリットになりますが、それは中小・零細向けに小口の融資をきちんと行っている証であり、銀行融資と比較して貸しはがしの可能性も少ないので、一律に信用金庫からの資金調達は割高なので、できるだけ地銀と付き合った方が良いという考え方が間違いであるという事がわかります。

信用金庫の卒業制度がある

また、信用金庫には卒業制度があります。一部の小口融資や預金を担保にした融資を除けば、信用金庫から融資を受けるためには信用金庫の会員となる必要がありますが、信用金庫の会員になるためは原則としてその地域に事業所がある上で、従業員300名以下でかつ資本金9億円以下の企業でなければ会員にはなれません。
よって、事業規模が大きくなるといつかは信用金庫から卒業しなければならなくなります。

もちろん、事業規模が従業員300人以上、資本金9億円以上になったからと言って、急に信用金庫を使えなくなるわけではありません。融資は受けられなくなりますが、口座は事業規模が大きくなった後でも引き続き使用する事ができますし、会員だった期間に応じて卒業した後も5年から7年の間は信用金庫から融資を受けられるようになっています。

このように、長期的に信用金庫との関係を築いてきても、事業規模が大きくなればいつかは信用金庫が使えなくなってしまうというのが信用金庫のデメリットとなります。

貸付可能額が限られていて大規模な資金調達には向かない

他のデメリットとしては、どうしても取り扱い預金額が少ないので融資に回せる原資が少ないという点にあります。メガバンクや地銀と比較すると一般的に取り扱い預金額が少ないのでどうしても融資の規模も小さい案件が中心となってしまいます。この様な事から信用金庫は大規模な資金調達には向きません。

よって、そろそろ信用金庫からの卒業が見えてくるような事業規模の会社にとっては信用金庫の融資額は少し物足りなく感じるかも知れません。なお、一般的に言って融資による大規模な資金調達を行うためには、メガバンクと付き合う必要があります。なお、信用保証協会の制度保証つき融資を申し込む場合限度額は1億円なので、1億円以上の資金を調達したい場合は原則プロパーでの融資となるので地銀を使っても信用を積み重ねていなければ難しくなります。

ただし信用金庫が物足りなくなって銀行からの資金調達がメインになったとしても、信用金庫は貸しはがしの少ない保険的な資金調達の手段として引き続き付き合いをした方が良いと考えられます。

メガバンクと比較するとやはり不便に感じる事もある

また、メガバンクと比較すると信用金庫は使い勝手が悪いというデメリットがあります。一番わかりやすいのがATMの数でメガバンクであれば出張時などにでもコンビニからキャッシュカードを使って日本国内どこでも口座からお金が引き出せるのに対して、信用金庫はその信用金庫がカバーしているエリアのその信用金庫のATMからしか下す事ができずに、場合によってはコンビニから引き出せない場合もあります。また、信用金庫のATMはメガバンクのATMよりも早く閉まりがちでもあります。
このような観点から見れば、メガバンクと比較して信用金庫はATMの使い勝手が少し悪いと言う事ができます。

ATMだけに限らず全体的に信用金庫はメガバンクよりも使い勝手は劣ります。
例えば、企業でも振込や残高確認などについて、インターネットバンキングにより銀行やATMに行かずに社内で決済を行う事がごく一般的になってきましたが、信用金庫のインターネットバンキングはメガバンクと違って有料となっていたり、メガバンク程IT投資にお金を掛けられないので使い勝手も劣っているケースが多々あります。
このような観点から言えば、信用金庫はお金を入れたり出したりする場合には不便な事が多いので、色々出し入れを行いたい場合は、メガバンクや地方銀行に口座を持っておいて、そちらの口座でお金のやりとりをした方がスムーズに業務を行う事ができます。

また、BtoCのビジネスを展開している企業は中小企業だけではなくメガバンクの口座も持っておいた方が良いでしょう。
例えば、通販会社のような業態の場合、買い物代金の払い込み方法に銀行振り込みが使われる場合がありますが、地方のマイナーな信用金庫に振り込むと手数料が掛かってしまうので、消費者視点で見れば、誰でも口座を持っていて振込手数料が抑えられるメガバンクの口座の方が好まれる傾向があります。また、消費者は騙されないか注意しながら銀行振り込みを行うので、地方のマイナーな信用金庫よりもメガバンクに振り込みを行う方が消費者は安心して振り込みができると言われています。
このような観点から考えればインターネットを使って売り上げをあげているBtoC企業は信用金庫だけしか口座がなければ消費者にとって不便なのでメガバンクの口座も同時に保有しておかなければならないという事がわかります。

最期に

以上のような信用金庫のデメリットを踏まえた上で、信用金庫とはどのように付き合っていけばよいのでしょうか。まず、注意しなければならないのは、出し入れを頻繁に行う場合には信用金庫の口座は向かないという事です。

信用金庫はメガバンクなどと比較すると、ATMが限られたエリアにしか設置されていないし、ATMの利用時間もメガバンクのATMよりも短く設定されています。また、ネットバンキングも有料であったり、使い勝手が悪かったりします。この様な理由から給与支払いや顧客からの売上入金の口座の様に大量の取引を行う口座に対しては信用金庫の口座は向きません。この様な口座はメガバンクや地銀の口座に設定しておいた方が良いでしょう。

また、BtoC事業を行っている企業の場合は、マイナーな信用金庫の口座を使っていると、消費者が無駄に振込手数料を支払う事になりますし、マイナーな信用金庫に口座を持っているという事は十分に信用できない会社なのではないかと疑われる可能性があるので、誰でも口座を持っていて振込手数料が安く、知名度もきちんとあるメガバンクの口座を利用した方が良いでしょう。

この様な信用金庫を利用する事のデメリットはありますが、逆に言えば、一般的に言われている信用金庫は地方銀行やメガバンクと比較して貸し出し可能額が少ない事や、貸付金利が高い事などは実はデメリットの様でデメリットではありません。中小企業、零細企業向けに特化しているのでこの様な貸付金額、金利になっているのです。

信用金庫の貸付金利が高い理由は、少額の融資をたくさんの企業に行うので一融資当たりの融資に付随するコストが高くなる事に原因があります。
よって、信用金庫の貸付金利が高いのはある意味で中小、零細企業に対して融資を行っていれば仕方ない事だと言う風に言えます。また、信用金庫は貸付金利が高い分だけ、銀行よりも貸しはがしのリスクが少ないので、金利が高い分安定して資金供給先になっているという風に考えれば信用金庫の貸付金利は決して高いというわけではありません。
また、事業の規模が大きくなればいずれ信用金庫を卒業しなければならないし、大量の資金を調達したい場合には信用金庫が向かない事には注意が必要です。

この様に信用金庫のデメリットを考えると確かに使い勝手が悪いというデメリットはありますが、中小企業として信用金庫と取引がないという事は良くないと考えられます。信用金庫は中小・零細企業の安定した資金供給源となるので付き合っておいた方が良いでしょう。